Draco in meam第23話「面影」

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彼女の姿は覚えている。
肩まで伸びた赤毛の髪が彼女のトレードマークだった。


「アレック・・・。」


彼女の声はとても心地が良かった。
どんなに心が乱れていても、その声を聞くだけで平穏さを取り戻せた。








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彼女の顔には大きな火傷の痕があった。
その火傷を見て心無い事をいう者も居たが、彼女は常に気丈だった。


アレックは彼女に向かって手を伸ばした。
もう、彼女を失いたくはなかった。


しかし、そんなアレックをあざ笑うかのように、彼女の姿は薄れていった。


待ってくれ・・・!








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「リリィッ!!」


アレックは勢いよく目を覚ました。
既に”彼女”の姿はアレックの目の前から消えうせていた。


彼は辺りを見回した。
小さな部屋にベッドとイスが一つずつ。
イスの横に置いてあるテーブルには小さな蝋燭がゆらゆらと揺れていた。








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「ここは・・・宿屋か。」
アレックはベッドの縁に腰掛けると、自分の姿に目をやった。


彼が身に着けていた鎧は粗末なズボンのみに変わっていた。
所々が破けており、辛うじて衣服の体は成しているものの、それだけでは心もとなかった。


アレックはそっと自分の胸に手をやった。
あの時、リリィのつけた胸の傷は跡形も無くなっていた。


「また・・・死ねなかったな。」
あるはずの傷跡を触りながらアレックは呟いた。


彼はベッドから立ち上がると、おぼつかない足取りで部屋から出て行った。








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「あら?起きたのね。身体の具合はどう?」
部屋から出てきたアレックを見て、宿屋の主人は驚きながら言った。







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「あぁ。俺はどのくらい気を失っていたんだ?」


「ちょうど丸3日くらいかしら。」


「そうか。リリィは・・・俺と一緒に居た女の子は?」


「2本角の女の子?彼女なら宿屋を出てすぐの所にある焚き火の近くで見たわ。」


「わかった。それと、俺の鎧は知らないか?」


「あの鎧なら捨てちゃったわ。プレートに大きな穴が開いてたし血で汚れていたからね。」


「困ったな。あの鎧しか着るものを持って居なかったんだが。」


「それなら、これを持って行って。」
女主人はそう言うと、カウンターの下から鎧を取り出した。


「これは?」


「うちの村をドラゴンから救ってくれたお礼だよ。」








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それはドラゴンの厚い皮に硬化処理を施したレザーアーマーであった。
身に着けると普通の革鎧よりも軽く、彼の身体に馴染んだ。


「もらってもいいのか?」


「あなた達の倒したドラゴンの皮から作った物なの。だからあなたが着るべきよ。」


「ありがとう。」


「お礼を言いたいのはこっちの方よ。あなた達は村の英雄なんだから。」


「英雄・・・か。」


アレックは照れくさそうにそう言うと、女主人にもう一度礼を言って宿屋を後にした。







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リリィは宿屋の近くにある焚き火に当たっていた。


「リリィ。」


「アレック・・・。」
彼女は悲しげな声で言った。







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アレックは彼女の姿を見て驚いた。
深緑色だった彼女の髪は黒に染まり、長さも伸びていた。
そして、身体の色も以前より濃くなっていた。


「身体が元に戻らないの・・・。」
リリィは声を震わせた。


アレックは静かにリリィの隣に腰を下ろした。


「最初は数分だった。」


「え?」
リリィは戸惑いながら言った。







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「死にかけてから目を覚ますまでの時間だ。」
アレックは遠くを見つめながら言った。


「こんな身体になってから何度か経験したが、徐々に目を覚ますまでの時間が延びてきている。」


「それって・・・。」


「本当の”死”が近づいているのかもな。」
アレックは自嘲気味に笑った。


「私のせいで・・・。」


「違う、お前のせいじゃない。」


「でも、私はこんな身体だし、またアレックのことを傷つけてしまうから。」








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「俺達は一緒なんだ。」
アレックはリリィに顔を向けた。


「俺もリリィも自分じゃどうしようもない”呪い”に苦しんでいる。」


「呪い・・・。」
リリィは小さな声で呟いた。


「これからも俺が傍にいる。もし、お前がまた暴れたとしても俺なら止められる。」


リリィは顔を上げてアレックの顔を見た。


「だから、この呪いを解く為にもアルドゥインを探そう。」


「・・・うん。そうだね。」
リリィはそう言って少しだけ微笑んだ。


「そうだ、デルフィンはどうした?」


「調べ物があるから先にリバーウッドに帰るって・・・。」


「そうか。俺達も準備が出来たらリバーウッドに向かおう。」
















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日が沈んでも、リリィ達は話を続けた。
まるで、先日の忌まわしい記憶を拭い去るかのように。


深い夜の中で、頭上に煌く満点の星達だけが二人のことを照らし続けていた。








次回に続く。

Comment 6

Sat
2015.05.09
20:48

yoituki #-

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No title

更新お疲れ様です!

アレック、カッコイイなっ(⌒_⌒)♪♭
うちのドヴァ子も、ドラゴンに変身出来る動画内設定なので、リリィちゃんにはちょっと親近感が^^;

だんだんと状況は深刻になってきている様ですが、さて、どうなるのか?
みんな大好き(w)デルフィンが、なにか打開策を発見するのか?

次回も楽しみにしています♪

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Sat
2015.05.09
23:57

ミースケ #-

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>>yoitukiさん
いつもコメントありがとうございます!

アレックはこの物語のもう一人の主人公なので、これから先も色々と謎が判明していきます。
冒頭でアレックの記憶の中に現れた女性のことも、後々明かされていきますのでお楽しみに!

ここから先はメインストーリー通りには進まなくなっていくと思います。
まだまだ先は長いですが、良ければお付き合いください(≧▽≦)

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Tue
2015.05.12
16:05

ベルルスコーニ #-

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No title

ドラゴンのレザーアーマーがカッコイイ!ヽ(・∀・)ノ
まさに、ドラゴンにはドラゴンを持って制すですね
これで、武器をドラゴンの骨から作れば完全なモンスターハンターになれ(ry

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Tue
2015.05.12
19:22

ミースケ #-

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>>ベルルスコーニさん
いつもコメントありがとうございます!

ドラゴン装備ってロマンですよね!
ただ、アレックは運が無いので最後の素材で物欲センサーが働きそうですw

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Wed
2015.05.13
11:05

袋小路 #-

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No title

綺麗に完全再生しちゃって…その皮肉さで哀しさ増々です;;
美しい新装備が竜関係なのがまた呪縛を感じますです。。

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Wed
2015.05.13
11:15

ミースケ #-

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No title

>>袋小路さん
いつもコメントありがとうございます!

アレックはこれまでに何度も同じ経験をしています。彼の言う目が覚めるまでの時間が延びているとは何を意味しているのでしょうか。

ちなみに、12話のドラゴン戦でアレックが言っていた「アレを使うしかない」とはこの呪いの事を指しています。

死なない身体を武器にしてドラゴンを倒すつもりだったのでしょう。

彼はドラゴンと強い因縁で結ばれています。
その理由もいずれ明らかになるかと・・・。

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