Draco in meam第20話「記憶」

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「大丈夫、彼女はもう眠ったわ。」
デルフィンは少し疲れたような顔をしてテントから出てきた。


「あんたも休んでくれ。火は俺が見ているよ。」
アレックは顔を上げて言った。


「もう少し起きているわ。隣に座っても良いかしら?」


「別に構わないが・・・。」
アレックがそう言うと、デルフィンはエールの入ったコップを片手に持ってアレックの横に腰掛けた。






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「本当に不思議なものね。話に聞いていたデイドラとは全然違うわ。」


「・・・ッ!知っていたのか?」
デルフィンの言葉にアレックはぎょっとした。


「あら、気づかないとでも思っていたの?私はブレイズの生き残りよ。デイドラかどうかなんてすぐに分かるわ。」
デルフィンは燃え盛る焚き火を見つめながら言った。


「・・・大丈夫。彼女には何もしないわ。約束する。」
そう言ってデルフィンはエールを一口飲んだ。


アレックはデルフィンのことを注意深く見ていた。


「200年前まではデイドラと戦っていたのに、今の私はデイドラを導こうとしてる。因果なものね。」
デルフィンはそう言いながら自嘲気味に笑った。


「でも、別に後悔はしていないわ。私が今日まで生き延びたのも、きっと彼女を・・・ドラゴンボーンを導くためだったのよ。」


アレックはデルフィンを見ていた。
彼女の顔には強い決意の色が現れていた。


「・・・すまない。あんたを誤解していたようだ。」
アレックはデルフィンに言った。


「あら?私は別に気にしていないわ。」
彼女はそっけなくそう言うと、エールを口にした。


「そうだ。あなたに聞きたいことがあったのよ。」
ふと思い出したようにデルフィンは言った。


「聞きたいこと?」






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「あなた。本当は何者なの?」


「・・・何の話だ?」


「あなた達と旅をしていくつか気になることがあったの。この二日間、あなたはひとかけらのパンはおろか、水すら口にしていなかったわ。」


「・・・」
アレックは驚いた顔をしてデルフィンを見つめた。


「それに、昨日の火の番もあなたがしていたわ。一体いつ眠っているのかしら?」







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「・・・やはりあんたは只者じゃないな。」
アレックはばつが悪そうな顔をして言った。


「説明してくれるかしら?」


「これは・・・”呪い”なんだ。」
搾り出すようにアレックは言った。


「呪い?」


「俺は・・・昔、アルドゥインと戦ったことがあるんだ。」


「黒いドラゴンと戦ったことがあるの?」


「あぁ、そして俺はアイツに負けた。この呪いはその時に受けたんだ。」
アレックは自分の胸に手を当てた。


「あれから眠ることも食べることも出来なくなった。それに・・・」


「どうしたの?」


「・・・いや、気にしないでくれ。とにかく、俺はアルドゥインのせいでこんな身体になったんだ。」


「なるほど、それがアルドゥインを探している目的だったのね。あのドラゴンを殺せば・・・あなたの呪いが解けるのね。」


アレックは静かに頷いた。


「分かったわ。それじゃ、彼女と一緒に居る理由も教えてくれるかしら?」


「リリィのことか?」


「そうよ。デイドラの彼女とどうして旅をしているの?」


「あいつを最初に見たのはホワイトランの宿屋だった。俺はその時、黒いドラゴンについての情報を集めていたんだが、その時にリリィが話しているのを聞いたんだ。」


「何を?」


「ドラゴンの話さ。宿屋の主人と話しているのを耳にしたんだ。その時は、ドラゴンなんておとぎ話の中だけのものだった。誰に話しても馬鹿にされて当然さ。それなのに、あいつは真剣な顔で話していたんだ。」


「それで声をかけたのね。」


「そうだ。あいつの話を聞いて、目的が同じ黒いドラゴンだと分かった。だから一緒に旅をすることに決めたのさ。それに・・・」


「それに?」


「名前さ。リリィという名前を聞いたとき、思い出したんだ。俺の”大切な人”の名前もリリィだった。」






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「ちょっと待って。大切な人なのにどうして忘れてしまったの?」


「俺には・・・昔の記憶がないんだ。」


「それって記憶喪失っていうこと?」


「ホワイトランでリリィと出会う以前の記憶がはっきりしないんだ。まるで頭の中に霧がかかっているみたいに。」


「それじゃ、アルドゥインと戦ったというのも本当かどうかわからないんじゃない?」


「あのドラゴンと戦ったことは覚えているんだ。でも、いつ、どこで戦ったのかは覚えていない。あいつにこの呪いを受けて、気がついたらホワイトランの近くで倒れていたんだ。」
アレックはそう言って自分の手を見つめた。


「それからは時々、昔の記憶が蘇るようになったんだ。」


「何を思い出したの?」







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「最初に思い出したのは家族のことだ。俺は父と妹の3人で暮らしていた。」


「家族の名前は思い出せたの?」


アレックは首を振った。


「名前も顔も思い出せない。それに俺の家族はすでに死んでいる。奴らに殺されたんだ。」


「奴ら?」


「”竜教団”さ。」
アレックは吐き捨てるように言った。


「竜教団?今のスカイリムにそんなものは居ないわよ。」
デルフィンは困惑した表情で言った。


「・・・ん?確かにそうだな。どうして俺はそんなことを言ったんだ?」
アレックは自分の言ったことに戸惑っていた。


竜教団。
太古の時代に存在したドラゴンを崇拝する集団。
彼らはドラゴンの消滅と共に、スカイリムからその姿を消した。


なぜ、俺の家族を殺したのが竜教団だと思ったんだ・・・?
アレックの頭にズキンとした痛みが走った。






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「少し疲れた。悪いが一人にしてくれないか?」
アレックはデルフィンに言った。


彼の顔を見たデルフィンは、静かに頷くとテントの中へと入って行った。






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アレックは、自分でも理解できない記憶に苛立ちを覚えていた。
思い出した映像は、バラバラになったパズルのピースのように彼の頭に浮かんでいた。


彼の自問自答は、朝日が昇っても終わることは無かった。





次回に続く。

Comment 2

Wed
2015.03.25
18:06

lerica@キノ頭 #-

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No title

更新お疲れ様です!
盛り上がるヨカーン!(゚∀゚)
これは展開が気になりますねぇ( ´艸`)

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Wed
2015.03.25
18:25

ミースケ #-

URL

No title

>>lerica@キノ頭さん
コメントありがとうございます!

今回で、アレックには「生理的欲求の欠如」、「記憶の喪失」という2つが起きていることが明らかになりました。
これまでの旅の中でも、そういった行動(飲食・睡眠)をしていなかったので不思議に思っていた方もいると思いますw

また、次回はこの物語の中でかなり重要な話になります。

お楽しみに(*´∀`*)

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