Draco in meam第14話「見知らぬ天井」

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ドラゴンの襲撃から1週間。
ホワイトランの人々は、訪れた平穏を享受していた。


酒場からは、ドラゴン討伐の犠牲になった衛兵達を称える歌が聞こえてくる。
死傷者10数名。
それはあまりに大きな犠牲であったが、ホワイトランのために死んでいった衛兵達は紛れも無く英雄だった。




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アレックはドラゴンズリーチにいた。
険しい顔でファレンガーの元へと歩いていく。


「リリィの様子は?」


「まだ意識は無い。」
ファレンガーは淡々と答えた。


あれから、1週間経ってもリリィが目を覚ますことは無かった。
身体の傷は深くないものの、深いこん睡状態に陥ったままだった。




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「お前の怪我の具合はどうだ?ドラゴンの牙にやられたのだろう。」


アレックもドラゴンとの戦いで負傷していた。
ドラゴンの牙は彼の右腕に深く食い込み肉を抉っていた。


「俺なら心配ない。」
にべもなくアレックは言った。


「心配ない?あんな酷い傷、私は見たことが無いぞ。」
ファレンガーはそう言ってアレックの元へと近寄った。


「見せてみろ。」


アレックは素直に右腕を見せた。


「・・・な、なんだこれは?」
ファレンガーは困惑した。


傷が無いのである。
縫い跡はおろか、傷一つ無い綺麗な腕がそこにはあった。


「言っただろう。俺の心配はしなくていい。」
そう言ってアレックは捲くっていた服を下ろした。


「あれほどの傷・・・。一体どうやって治したんだ?」


「俺の身体は”特別”なんだ。それより、リリィに会いたいんだが・・・。」


「あぁ、丁度包帯を変え終わったところだ。そこの部屋で眠っている。」
ファレンガーは奥の部屋を指差した。


「わかった。ありがとう。」
アレックはそう言って奥の部屋へと入っていった。




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ベッドでは身体中に包帯を巻いたリリィが眠っていた。
悪夢でも見ているのか、ときおり顔をこわばらせている。


「リリィ・・・。」
アレックは小さな声でつぶやいた。


その時・・・




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「駄目ッ!!」
突然、大きな声を上げてリリィが起き上がった。




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「リリィッ!」
アレックはリリィの傍へと駆け寄った。


「アレック!?私一体・・・ここは何処?ドラゴンはどうなったの!?」
リリィは取り乱しながらアレックに言った。


「とにかく落ち着け。あの時、何があったのか覚えていないのか?」


「・・・うん。」
リリィはうつむきながら言った。


彼女は混乱していた。
ドラゴンとの戦いの最中、リリィは自分の中にある力を呼び覚まそうとした。
なぜそうしようとしたのかは分からないが、リリィには奇妙な確信があった。


気がつくと、彼女は暗闇の中に居た。
そして、”誰か”の目を通してアレックを見ていた。
それが誰なのかは漠然としない。
しかし、その誰かがアレックに強い殺意を抱いているのは分かった。


だから、彼女は必死にその誰かを止めようとした。
アレックが殺されないようにと懸命に祈った。


そして、気がつくと知らないベッドに寝ていて、目の前にはアレックが佇んでいる。


「一体何があったの?」


「それは・・・。」
アレックは、今までのことをリリィに話した。











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「私がアレックを殺そうとした・・・?」
リリィは困惑しながらアレックに言った。


「あいつは、お前であってお前じゃなかった。」
アレックはなだめるように言った。


そうだ。
あの時のリリィはリリィじゃなかった。
それに俺のことを昔から知っているような口ぶりだった。


あいつは一体・・・。


「私がデイドラだからかな・・・。」
リリィがぽつりと呟いた。


「・・・なんだって?」
アレックがリリィに聞き返した。


「私、人じゃなくてデイドラなの。だから、あんな風におかしくなっちゃうのかな・・・?」
寂しそうにリリィは言った。




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「デイドラかどうかなんて俺には関係ない。」
アレックは強い口調で言った。


「え・・・でも人じゃないんだよ?またアレックのことを殺そうとしちゃうかもしれないし・・・。」


「俺の心配はしなくていい。」
リリィの話をアレックは遮った。


「お前がデイドラだろうと俺達の関係に変わりは無い。お前が無事でよかった・・・。」
アレックはそう言ってリリィに笑いかけた。


「・・・うん、ありがとう。」
リリィはそう言ってヨロヨロと立ちあがった。




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「どうしたんだ?」


「もう行かないと・・・。ここで休んでもいられないよ。」
リリィはそう言って、扉を開けて部屋の外へと出た。




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「目が覚めたのか!!」
ファレンガーはリリィを見て声を上げた。


「傷の治療をしてくれたんだってね。ありがとう、ファレンガー。」


「別にたいしたことじゃない。お前はドラゴンを倒したんだ、失うには惜しい。」
それに、良い研究材料になりそうだしな。そう言ってファレンガーは笑った。


「そうだ、これをお前にやろう。」
ファレンガーはそう言うと、袋を取り出してリリィに渡した。


「なにこれ?」
リリィが袋を下に向けると、中から魔力の込められた装備が出てきた。


「お前の着ていた服は、あまりに汚くて捨ててしまったからな。それはドラゴンストーンの報酬として受け取ってくれ。」


「ありがとう、ファレンガー!」
リリィはそう言うと、その場で包帯を外しだした。


「まったく・・・お前に羞恥心はないのか。」
呆れたようにアレックは言った。




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「どうだ、着心地は?」


「凄くいいよ!それに、なんだか魔力が身体から溢れてくるみたい。」
楽しそうにリリィは言った。


「それは特別なエンチャントが施されていてな。着ている者の魔力を底上げしてくれる。それに、敵意を持つ者が近くに居ると”黒く蠢く”らしい。」


「うごめく・・・?」


「実際に見たことが無いからなんとも言えないがな。どうだ、気に入ったか?」


「もちろん、ありがとうファレンガー!」
リリィはにっこりと笑った。




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「そうだ、首長がお前たちを呼んでいたぞ。」


「私達を?」


「あぁ、目が覚めたら会いに来るようにとさ。」


リリィはアレックの方に目をやった。


「お前が大丈夫なら、一緒に行こう。」
アレックはそうリリィに言った


「うん!」


リリィ達はファレンガーにお礼を言って、首長の元へと向かった。




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「リリィ、目が覚めたのか。」
バルグルーフ首長は驚いたようにそう言った。


「話があるってファレンガーに聞いたの。」


「あぁ、そのことなんだが・・・。」




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「そこに止まりなさい!」
バルグルーフに近寄ろうとするリリィにイリレスが言い放った。


「え・・・なんで?」
困ったようにリリィは言った。


「あなたは危険よ。首長には近づかせないわ。」
そう言ってイリレスは剣に手をかけた。


「イリレス!やめるんだ。」
バルグルーフがイリレスをたしなめる。


「でも、彼女は危険な怪物よ!」


「イリレスッ!!」
バルグルーフの声が、宮殿内に響き渡った。




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「すまないな、リリィ。気を悪くしないでやってくれ。」


「イリレスは恐れているんだ。お前の持っている力に。きっとホワイトランの人々も、同じように思うだろう。」


「私がドラゴンを殺したから?」


「ただ殺したからじゃない、ドラゴンの魂を”吸収”して殺したからだ。それも手を触れることなく。」


「俺も御伽噺で聞いたことがある。お前のような者のことをな。」


「ドラゴンボーン・・・か。」
アレックが呟くようにそう言った。


「そうだ、こんなことが出来るのはドラゴンボーンしか居ない。」


「ドラゴンボーン。」
リリィはかみ締めるように呟いた。
ドラゴンの魂を吸収できる者。
それじゃ、あの時現れた”私以外の誰か”もドラゴンボーンの力なの?


「リリィ。」
バルグルーフがリリィの名を呼んだ。


「お前には感謝している。ドラゴンからこの街を救ったのは紛れも無くお前だ。本当なら私兵に任命するべきところなのだが・・・。」
そう言ってバルグルーフはイリレスへと目をやる。


「イリレスの様にお前のことを快く思っていない者が居ることも事実だ。許して欲しい。」


「別にいいよ。そのシヘイっていうのよくわからないし。」


「そうか、それではなにか別の形で感謝を示したい。なにかして欲しいことはあるか?」


「なんでもいいの?」


「あぁ、俺に出来ることならな。」




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「実は・・・フルダに借金があるの。」
恥ずかしそうにリリィは言った。


「なるほど・・・。いくらだ?」


「・・・500ゴールド。」


「・・・それだけか?」
気の抜けたようにバルグルーフは言った。


「うん。・・・だめ?」


「いや・・・そのくらいお安い御用だ。」
そう言ってバルグルーフは笑った。


「後で使いのものに500ゴールドを持って行かせるよ。」


「本当?ありがとう!」
リリィは嬉しそうに飛び跳ねた。
その時・・・。











「Dov-Ah-Kiin!!!」


突然、雷鳴と共に大きな声がホワイトランに響き渡った。
それはドラゴンズリーチに居るリリィ達にも届くほどであり、事態を把握できない者はみな困惑していた。


「首長、今のは?」
イリレスがバルグルーフに目をやる。


「あぁ、グレイビアードだ。彼らがリリィを呼んでいる。」


「私を?」
リリィは自分を指差しながら言った。


「今聞こえたDov-Ah-Kiinとはドラゴンボーンの別の呼び名。つまり、お前のことだ。」


「でも、なんで私を呼んでいるの?」


「それは、彼らがシャウトの達人だからだ。ドラゴンボーンであるお前に興味を示したのだろう。」


「シャウトって?」


「ドラゴン達が操る言葉のことだ。それらは意味を持ち、声に出すことでその言葉の力を具現化することが出来る。」


「グレイビアードとは、そのシャウトの修行をしている者達のことで、彼らはハイフロスガーで暮らしている。」


「ハイフロスガー?」


「イヴァルステッドという村から7千階段を登った先にある巨大な建物のことだ。」


「イヴァルステッド・・・。かなり距離があるがどうする?」
アレックはそう言ってリリィに顔を向けた。


「・・・行こう。グレイビアードならドラゴンボーンについて色々教えてくれるかも。」
リリィはそう言って笑った。


「行くのか、リリィ。」
バルグルーフはリリィに言った。


「うん、色々とありがとう。」


「お礼を言いたいのはこちらの方だ。いつでもホワイトランに立ち寄ってくれ。」


「分かった。それじゃあね!」


リリィ達は別れの挨拶をして、ドラゴンズリーチを後にした。




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「リリィ、あれがハイフロスガーだろう。」
アレックはそう言って、遠くにある山頂を指差した。


確かに大きな建築物の姿が目に入る。

「うわ・・・遠いなぁー。」
大きな伸びをしながらリリィは言った。


「それじゃ、行こうか。」
アレックはリリィに目をやる。


「そうだね、目指すはイヴァルステッド!」
そう言うと、リリィは元気良く歩き出した。









次回に続く。




Comment 4

Fri
2015.01.30
16:29

yoituki #-

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No title

更新お疲れ様です ヽ(*´∀`)ノ
この流れだと、グレイビアードは普通にリリィさんを呼んだんじゃない様な予感・・・
ツケは首長に払わせましたかwやるなw
装備はSotteta Necromancer Outfitかな?ナイスなおしr(以下自主規制

先日、僭越ながら私のブログにてEvelynさんをご紹介させて頂きました。装備の所為でだいぶイメージが変わってしまった様な・・・うむむ・・・

続きお待ちしております (´∀`)

Edit | Reply | 
Fri
2015.01.30
19:43

野生のノルド人 #-

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No title

更新お疲れ様です!

私兵にはなれませんでしたか……
でもリリィちゃんは町の人との交流は不得手そうですし、
さすらっている方が気楽でいいのかもしれませんね

しかし通常のドラゴンボーンとはかなり違ったリリィちゃんは、
グレイビアードで何を得るのでしょう
先が気になります!

Edit | Reply | 
Fri
2015.01.30
20:25

ミースケ #-

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No title

>>yoitukiさん
いつもコメントありがとうございます!

グレイビアードの皆さんにご期待ください・・・。
フルダへの借金が無くなったので、またご飯を食べにいけますねw
装備はSotteta Necromancer Outfitです。
パーツが細かく分かれるので、色々と楽しめますね(゜Д゜*)

ブログ拝見させて頂きました!
ああいうセクシーな衣装も新鮮でよかったです!
色々コーディネートしてあげて下さい(*ゝ∀・*)

次の更新も頑張ります!

Edit | Reply | 
Fri
2015.01.30
20:34

ミースケ #-

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No title

>>野生のノルド人さん
いつもコメントありがとうございます!

やはりデイドラの私兵というのは違うと思い、ストーリーを変更しました。なので、ゴリ(以下略さんも出てきませんw

リリィの秘密もこれから徐々に判明していくと思います。
良ければ、これからもお付き合いください(*´∀`*)ノ

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